表現の自由の保障
- 憲法21条1項は、表現の自由を保障している
憲法21条1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保証する。
表現の自由に対する制約
- 表現の自由には、公共の福祉による制約が課される
判例: 立川反戦ビラ配布事件
- ビラ投函目的で公務員宿舎である集合住宅の敷地に管理権者の意思に反して立ち入ったXを住居侵入罪で処罰することが憲法21条1項に違反するかが争われた
- 政治的意見の表現方法としてビラ配布であっても、一般に人が自由に出入りできない場所で、管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害し、住民の私生活の平穏も侵害することから、住居侵入罪に問うことは合憲である
二重の基準
- 二重に基準とは、精神的自由権を規制する法律を、経済的自由権を規制する法律よりも厳しい基準で審査すること
- 精神的自由権: 表現の自由など
- 経済的自由権: 職業選択の自由など
表現の自由の保障の解釈
- 保障が及ぶ例
- 集団行動の自由
- 知る権利
- 報道の自由
- 保障が及ばない例
- 反論記事掲載請求権
- 筆記行為の自由: 裁判の傍聴人が筆記行為をする自由(今は傍聴人は誰でも筆記行為可能)
- 取材の自由
判例: レペタ法廷メモ採取事件
- 研究の一環として裁判を傍聴していたXが、メモ採取の許可を申請したが、裁判長に不許可とされたため、これを不服として、国家賠償請求訴訟を提起した
- 憲法82条1項で規定される裁判の公開は、傍聴人がメモをとる権利を要求できることまで認めたものではない
- 筆記行為は一般の生活行為であることから全てが憲法の保障する自由に関係するとは言えないが、情報の摂取の補助としてなされる限り、筆記行為の自由は尊重されるべきである
- しかし、筆記行為の自由は憲法で直接保障される表現の自由そのものとは異なるものであるから、制限または禁止には厳格な基準は要求されず、本件において一般傍聴人に対してメモを禁止した裁判長の措置は合理性を欠く措置とは言えず、憲法14条1項に違反しない
判例: 博多駅テレビフィルム提出命令事件
- 学生と機動隊員とが博多駅付近で衝突し、機動隊側の過剰警備による職権濫用罪等について検察が不起訴としたことを審査する裁判において、裁判所がテレビ放送会社Xに対して、衝突の模様を撮影したテレビフィルムを証拠として提出するよう命令した
- 報道の自由は、憲法21条の保障のもとにある
- 取材の事由は、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する
- 公正な裁判の実現の保障のため、報道機関の取材の自由がある程度の制約を受けても止むを得ず、本件の提出命令は許される
判例: 石井記者事件
- 刑事事件において、新聞記者には、その取材源についての証言拒絶の権利までは保証されていない
- 医師等は刑事事件であっても証言を拒むことができるが、新聞記者は拒めない
判例
- 印字事件において、新聞記者は、その職業の秘密について証言を拒絶することができる
判例: 新潟県公安条例事件
- デモ行進をすることは集団行動の自由として保証されるが、合理的かつ明確な基準の元で許可制にすることは、憲法21条1項に違反しない
判例: 泉佐野市民会館事件
- 市が、市民会館の使用について条例に「公の秩序を乱す恐れがある場合」には使用できない旨を規定し、過激派団体の集会の開催について不許可処分をしたことは憲法21条1項に違反しない
名誉侵害と表現の自由
- 他人の名誉を侵害する表現は、表現の自由の濫用であって、規制することもできる
- 名誉毀損に当たる表現行為について、目的がもっぱら公益を図るものであり、当該事実が真実である照明があれば、その表現行為には違法性はない
- 証明がなくとも、行為者がそれを真実であると誤信したことについての相当の理由がある問いは、その表現行為には故意または過失がないといえる
判例: 北方ジャーナル事件
- X社が北海道知事選挙に立候補予定のYを批判攻撃する記事を掲載しようとしたのに対し、Yが裁判所に仮処分を申し立てたところ、裁判所はその申し立てを認め、名誉毀損を理由に出版を差し止めた
- 表現行為に対する事前抑制は厳格かつ明確な要件の元においてのみ許容されるが、裁判所の事前差し止めは公権力による事前抑制にあたり、当該表現行為に対する事前差し止めは原則として許されない
- しかし、以下のいずれかの場合には例外的に事前差し止めが許される
- その表現内容が真実でない場合
- それがもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるとき
判例
- 批判・論評の対象が公務員の地位における行動である場合には、当該公務員の社会的評価が低下することがあっても、その目的はもっぱら公益を図るものであり、かつ、前提としている事実が真実であることの証明があったときは、人身攻撃など論評の域を逸脱したものでない限り、名誉侵害の不法行為の違法性を欠く
判例: 月刊ペン事件
- 私人の私生活上の行状であっても、携わる社会的活動の性質及び社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に当たる場合がある
検閲の禁止
- 憲法21条2項前段では、検閲を明示的に禁止している
- 公共の福祉による例外を一切認めない
- 1項で表現の自由に対する規制を原則禁止した上で、2項で規制の一手段である検閲に強く言及していることから、検閲を絶対に禁止する意図が見える
憲法21条2項 検閲は、これをしてはならない。
判例: 税関検査事件
- Xはヌード写真集を輸入申告したが輸入を認められなかったため、これを不服として訴訟を起こしたが、その際、輸入にあたって輸入禁制品の検査を実施することが検閲の禁止を定める憲法21条2項に違反するかが争われた
- 憲法21条2項のいう検閲とは、行政権が主体となって、思想内容などの表現物を対象とし、その全部または一部の発表の禁止を目的として、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す
- 税関検査において輸入が禁止される表現物は、一般に国外において発表済みであり、輸入禁止は発表そのものを一切禁止するものではないので、税関検査は検閲にあたらない
検閲に関する判例
- 裁判所による出版差し止めは、「検閲」に当たらない(北方ジャーナル事件)
- 出版差し止めは司法権によるものであり、行政権によるものではないから
- 教科書検定は、「検閲」に当たらない(教科書検定事件)
- 教科書検定は、一般図書としての発行を妨げない
- 教科書検定の目的は、発表を禁止するためではない
- 教科書検定は、審査は発表前ではない
Ref
2026/01/25
- TAC 行政書士の教科書 第1編 Ch.2 Section.5