思想・良心の自由
- 憲法19条は、思想・良心の自由を保障している
憲法19条 思想及び良心の自由は、これを犯してはならない。
判例: 謝罪広告事件
- Xが選挙運動中に対立候補Yの汚職を公表したことに対して、Yが虚偽の事実の公表によって名誉を毀損されたとして謝罪文の掲載を求める訴えを提起したことに対し、下級審はXに謝罪公告を命ずる判決を下したが、Xはこの判決は憲法19条に違反するとして上告をした
- 単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度の謝罪広告を命ずる判決は、思想・良心の自由を侵害するものではなく、憲法19条に違反しない
信教の自由
信教の自由とその限界
- 憲法20条1項は、信教の自由を保障する
憲法20条1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。
判例: 宗教法人解散命令事件
- 宗教法人法の規定に基づき解散を命ぜられた宗教法人Xが、この解散命令は信教の自由を侵害するとして争った
- 宗教法人法による解散命令の制度は、もっぱら世俗的目的によるものであり、また、Xが公共の福祉を害する行為をしていることは明らかであるため、解散命令によってXや信者らの宗教的側面に及ぼす影響があることを考慮してもそれは間接的なものに過ぎず、本件は違憲ではない
- 世俗的: 世間一般で行われているという意味で、宗教的の反対語
政教分離原則
- 政教分離原則とは、国が宗教と過度に関わり合いを持つことを禁止する原則である
- 信教の自由のもと異教を信じる者に対して、迫害が生じないようにするため
- 相当限度の範囲内であれば関わり合いを持つことは許容される
判例: 津地鎮祭事件
- 三重県津市が、市の体育館の建設にあたって、新式の地鎮祭を行い、これに対して公金を支出したことが、政教分離原則に反するのではないかが争われた
- 政教分離規定は制度的保障の規定であり、間接的に信教の自由を保障しようとするものであるが、国家と宗教との完全な分離は難しいことから、行為の目的と効果に鑑み相当限度を超える場合のみこれを許さないものとする
- 宗教に対する援助・助長・促進または圧迫・干渉になるような「行為は、その関わり合いが相当とされる限度を超えるものと評価される
- 本件地鎮祭はその目的はもっぱら世俗的であり、その効果も神道を援助。助長。促進し、他の宗教に圧迫・干渉を加えるものでないから、政教分離原則には違反しない
判例: 箕面(みのお)忠魂碑訴訟
- 滋賀小学校の工事に伴い遺族会所有の忠魂碑を移転するため、移転先敷地を無償で貸与し、慰霊祭にしの教育庁が参列したことは、政教分離に違反しない
判例: 愛媛玉串料訴訟
- 県が靖国神社に対して玉串料その他の名目で公金により金品を支出したことは、政教分離に違反する
判例: 砂川空知太神社訴訟
- 市が町内会に対して、私有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供していることは、政教分離に違反する
表現の自由
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学問の自由
- 憲法23条は、学問の自由を保障する
- 学問研究の自由
- 研究発表の自由
- 教授の自由
- 特に、大学の自由の保障を主旨とするもの
憲法23条: 学問の自由は、これを保障する。
大学の自治
- 学生の集会が、学問的な研究と発表のためではなく、実社会の政治的社会活動の場合、その集会は大学の学問の自由と自治を享有しない
- 東大ポポロ事件
職業選択の自由
- 憲法22条1項は、経済的自由権の一つとして、職業選択の自由を保障する
- 職業選択の自由の解釈の一つとして、営業の自由も保障される
- 経済的自由である職業選択の自由には、精神的自由とは異なり、以下2つの規制がかけられる
- 消極目的規制: 他人の迷惑になることの防止
- 積極目的規制: 弱者保護
判例: 小売市場事件
- Xが無許可でこうる市場を開設したため、小売市場の許可制を定める小売商業調整特別措置法に違反したとして起訴された際に、Xは同法の許可制と既存市場からの距離制約は営業の自由を侵害するとして争った
- 小売商業調整特別措置法では、既存市場から一定距離離れた場所でなければ、新規市場の開設が認められない
- 個人の経済活動に対する規制は、社会の秩序維持の見地から看過できない障害がもたらされる場合に、消極的に、そのような障害を除去・緩和するために必要かつ合理的である限り許されるべきである
- 加えて、憲法は、すべての国民の生存権を保障するために、経済的劣位に立つものに対する保護政策を要求しており、積極的な社会経済政策の実施は国の責務と言えることから、経済的自由に対する合理的規制措置を講ずることは、もともと憲法が予定し、かつ、許容することである
- その上で、小売市場の許可規制は、中小企業保護政策の一方策として取った措置であり、規制手段も著しく不合理であることが明白であるとは認められない
判例: 薬局距離制限事件
- 薬局開設の許可基準に、距離制限規制を設けることは、不良医薬品の共有防止といった目的を達成するために必要かつ合理的な規制を定めたものということができないため、憲法22条1項に違反する
- 薬局開設の距離制限規制: 既存薬局の半径Xm以内に新規薬局を開設してはならないとする規制(消極目的規制)
NOTE
- 職業活動の自由関連で違憲判決が出ているのは、薬局距離制限事件のみであり、また、本件においては違憲とされたのは距離制限規定のみである
- 許可制や資格制の部分については、合憲である
財産権
- 憲法29条1項では、財産権を保障している
- 憲法29条2項では、財産権が公共の福祉に適合するよう明示している
- 憲法29条3項では、私有財産を正当な補償のもと、公共のために収容することを許可している
憲法29条1項: 財産権は、これを侵してはならない。 憲法29条2項: 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。 憲法29条3項: 私有財産は、正当な補償のもとに、これを公共のために用いることができる。
判例: 奈良県溜池条例事件
- ため池の破損・決壊などによる災害の防止を目的として、決壊を招く原因となるような工作物をため池の堤とうに配置するなどの行為を禁止し、処罰する条例は、憲法には違反しない
- この条例によりため池の堤とうを使用するものの財産上の権利行使は著しく制限されるが、公共の福祉を保持する上で社会生活上やむを得ないものであるため、損失補償は不要である
判例: 森林法共有林事件
- 森林法186条が共有森林の持分価額2分の1以下の共有者に対し、分割請求権を否定することは、立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定できないことが明らかであるため、憲法29条2項に違反する
判例: 河川付近地制限令事件
- 個別の法令に損失補償の規定がなくとも、その損失を具体的に主張立証して、憲法23条3項を根拠に補償請求をすることも可能である
人身の自由
適正手続
- 憲法31条は、刑罰を科すにあたっては、告知・弁解・防御の機会を与えるべきであることを要求している
- 手続法定だけでなく、手続適正、実体法定、実体適正を保障するものとして解釈されている
- 手続法定: 刑罰を科す手続きが法律により定まっていなければならない
- 手続適正: 刑罰を科す手続きは、適正(公正)でなければならない
- 実体法定: 犯罪とその刑罰は、あらかじめ法律で規定されていなければならない
- 実体適正: 犯罪とその刑罰は、合理的で適正でなければならない
- 手続法定だけでなく、手続適正、実体法定、実体適正を保障するものとして解釈されている
判例: 成田新法事件
- 成田新法に基づき運輸大臣が、Xの所有する家屋の使用禁止命令を行ったが、これに対しXは、法定手続の保障があるはずにもかかわらずいきなり行政処分を行われたことから、憲法31条に違反するとして当該命令の取り消しを請求した
- 憲法31条の定める法的手続の保障は、直接には刑事手続に関するものだが、行政手続が刑事手続でないという理由のみで保障の枠外になると判断すべきではない
- ただし、行政手続は刑事手続と性質が異なり、目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に対し常にその保障を与えることが必要となるものではない
判例: 第三者所有物没収事件
- Xが密輸しようとしたところを警察に発見・逮捕された後、関税法違反で有罪判決を受け、付加刑として没収系を言い渡され、第三者の所有物が没収された
- 没収刑は被告人の所有物かどうかに関わらずその所有権を剥奪し、国庫に帰属させる処分であるが、第三者の所有物を没収する場合において、当該所有者に対し何ら告知・弁解・防御の機会を与えずに所有権を奪うことは、著しく不合理であり憲法の容認しないところである
- また、この場合において被告人本人も、第三者から損害賠償請求を受ける危険性があるため、上告により救済を求めることができる
被疑者・被告人の権利
- 憲法33条は、現行犯の場合を除いて、逮捕には原則令状を要することを規定している
- 憲法35条は、逮捕の場合を除いて、捜索・応酬には原則令状を要することを規定している
- 憲法36条は、拷問及び残虐な刑罰を厳しく禁止する
- 憲法38条は、黙秘権を保障する
- 憲法39条は、遡及処罰の禁止、一事不再理、二重処罰の禁止を定める
- 遡及処罰の禁止: 後から法律を作って昔の行為を処罰する
- 一事不再理: 無罪の確定判決後は、再度調べ直しても処罰してはならない
- 二重処罰の禁止: 一度の犯罪に対して、処罰を繰り返し行ってはならない
判例
- 憲法35条の規定の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らず、これらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれるが、GPS捜査は、指摘領域に真にゅするそうさ手法であり、令状がなければ行うことができない強制の処分である
判例: 高田事件
- 憲法37条1項は、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常事態が起きた場合に、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である
判例
- 法人税法上の追徴税は、罰金とは性質が異なるため、追徴課税と刑罰を併科することは、憲法39条が定める二重処罰の禁止には当たらない
Ref
2026/01/25
- TAC 行政書士の教科書 第1編 Ch.2 Section.5