弁済
弁済
- 債務を履行して債権を消滅させることを弁済と呼ぶ (民法473条)
弁済の場所・時間
- 特約がなければ、弁済の場所は以下の通り (民法484条1項)
- 特定物の引き渡しの場合、債権発生時にその物が存在した場所
- それ以外の弁済の場合、債権者の現在の住所地
- 法令や慣習により取引時間の定めがある場合は、その時間内に弁済または弁済の請求ができる (民法484条2項)
受取証書・債権証書
- 弁済する者は、される者に対して受取証書の交付を請求できる (民法486条1項)
- 債権少々がある場合は、弁済した者が完済した時に、その証書の返還を請求できる (民法487条)
弁済の提供
- 弁済できるだけの状態を債権者に提供することを、弁済の提供と呼ぶ
- 時計を引き渡す債務を持っている場合、時計を債権者の面前に提示することが、弁済の提供に値する
- 債務者は弁済の提供をすることで、債務不履行責任を免れることができる (民法492条)
- 弁済の提供は、原則実物の提供でなければならない
- 以下の場合は口頭の提供(弁済できる状態であることを債権者へ通知し、受領を催告すること)が認められる
- 債権者があらかじめその受領を拒んでいるとき
- 債務の履行について債権者の行為を要するとき
- 以下の場合は口頭の提供(弁済できる状態であることを債権者へ通知し、受領を催告すること)が認められる
第三者弁済
- 以下のいずれかの条件を満たせば、債務者以外の者でも債務者の債務を弁済することは可能 (民法474条1項)
- 第三者が弁済をする正当な利益を有する場合
- 第三者が弁済をする正当な利益を有せず、以下のすべての条件を満たす場合
- 第三者の弁済が債務者の意思に反しているが、債権者がそれについて善意であること
- 第三者の弁済が債権者の意思に反さない、または、第三者が債務者に弁済を委託されていることを債権者が知っていること
弁済による代位
- 債務者のために弁済をした者は、債権者に代位できる (民法499条)
- 弁済した者は、債権者が持っていた抵当権などの権利をもらえる
- 保証人が他の保証人の分も含めて弁済した場合、他の保証人に対してその保証人の持分だけ求償できる
受領権者としての外見を有するものに対する弁済
- 債権者やその代理人など受領権限のある者以外に対する弁済は、原則無効である (民法479条)
- ただし例外的に、受領権者の外観を有する者に対して、その者が受領権者でないことについて債務者が善意無過失であった場合、その弁済は有効となり債権は消滅する (民法478条)
弁済の充当
- 債務者の弁済金額が、元本利息、費用の合計額に満たない場合、これを、費用、利息、元本の順に充当する (民法489条1項)
- 弁済順序に関して合意した特約があるときはそれを優先する (民法490条)
その他
代物弁済
- 弁済者が債権者との間で他の物の給付によって債務を消滅させる旨の契約をした場合、その給付が行われたとき、その給付は弁済と同一の効力を有する (民法482条)
- 所有権は契約時に移り、債務は給付時に消滅する
供託
- 以下の場合、弁済者は供託をすることで、債務を消滅させられる (民法494条1項2項)
- 弁済の提供をしたが債権者が受領を拒んだとき
- 債権者が弁済を受領できないとき
- 弁済者が過失なく債権者を確知できないとき
相殺
- 相殺とは、互いに金銭債権を持ち合っている場合に、以下の要件を満たせば、意思表示だけで支払ったことにできる民法制度である (民法505条1項)
- 双方の債権が対立していること
- 双方の債権が同種の目的を有すること
- 双方の債権が弁済期にあること
- 双方の債権が有効に存在すること
- 相殺を許す債務であること
- 相殺を行うと、双方の債権債務は相殺適状の時に遡って消滅する (民法506条2項)
- 相殺を行う側の債権を自働債権、行われる側の債権を受働債券と呼ぶ
弁済期と相殺
- 期限の利益は放棄できる (民法136条2項) ため、自働債権が弁済期にあれば、受働債券が弁済期にある必要はない
- 要件では双方の債権が弁済期であることを明記しているが、実質的には自働債権だけでよい
時効消滅と相殺
- 時効によって消滅した債権がこの消滅以前に相殺適状となっていた場合、債権者は、この債権を自働債権として自分の債務を相殺できる (民法508条)
不法行為と相殺
- 以下のいずれかの損害賠償の債務の債務者は、相殺を以って債権者に対抗できない (民法509条)
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償
- 人の生命または身体の侵害による損害賠償
- 不法行為に基づく損害賠償請求権を受動債権とする相殺の禁止は、不法行為の誘発を防止する趣旨がある
差押えと相殺
- 差押えを受けた債務者は差し押さえ後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない
- 差押前の債券であれば、差し押さえに対抗できる (民法511条1項)
- 差押え後に取得した債権でも、その原因が差押前であれば対抗できる (民法511条2項)
相殺制限の意思表示
- 当事者間の相殺禁止の意思表示は、善意の第三者に対抗できない (民法505条2項)
Ref
2026/03/12
- TAC 行政書士の教科書 第2編 Ch.3 Section.4