取得時効
時効による所有権の取得
要件・効果
- 以下の条件を満たす場合、占有が一定期間続くことで所有権の原始取得が認められる (民法162条)
- 占有者に所有の意思があること
- 占有者には所有の意思があることが法律上推定される
- 平穏公然と占有していること
- 善意無過失の場合は10年、それ以外の場合は20年継続して占有していること
- 最初が善意無過失であれば、途中から悪意に転じても10年でOK
- 占有者に所有の意思があること
原始取得と承継取得
- 原始取得: 最初からその人が取得したものとして扱うこと
- 抵当権は消滅する
- 承継取得: 誰かのものを引き継いで取得すること
- 抵当権は付いたまま
占有の承継
- 占有期間の計算においては、前の占有者の占有期間を足すことができる (民法187条1項)
- 前の占有者の占有を合わせて主張する場合、その瑕疵も併せて承継する
- 所有権を主張できる占有期間は、最初の占有者の善悪によって決定する
所有権以外の権利の取得
- 所有権以外の財産権を、自己のためという意思を持って平穏公然に行使する者は、善意無過失のときは10年、それ以外の時は20年を経過したのち、その権利を取得する (民法163条)
消滅時効
時効による債権の消滅
消滅時効
- 債権は、以下のいずれかの場合に消滅する (民法166条1項)
- 債権者が権利行使できることを知った時から5年間行使しないとき (主観的期間)
- 期限付きの場合は満期時点から
- 期限がない場合は債権成立時から
- 権利を行使できるときから10年間行使しないとき (客観的期間)
- 人の生命または身体の侵害に対する損害賠償の場合は、20年間となる (民法167条)
- 債権者が権利行使できることを知った時から5年間行使しないとき (主観的期間)
不法行為による損害賠償請求権の場合
- 不法行為による損害賠償請求権の場合、以下のいずれかの場合に消滅する (民法724条)
- 被害者又はその法定代理人が損害及び被害者を知った時から3年間行使しない時
- 人の生命または身体の損害に対する損害賠償の場合は5年間 (民法724条の2)
- 不法行為の時から20年間行使しない時
- 被害者又はその法定代理人が損害及び被害者を知った時から3年間行使しない時
時効による物権の消滅
- 債権又は所有権以外の財産権は、権利行使できる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する (民法166条2項)
時効の援用・放棄
- 時効とは一定期間で権利取得や消滅を認めるものだが、そのためには時効の利益を受ける意思を表示する必要がある
時効の援用
消滅時効
- 援用とは、時効の利益を受ける者が、その利益を受ける意思表示をすること
- 時効は、以下に当てはまる当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることはできない
- 保証人、連帯保証人 (債務者の債務を保証した人)
- 物上保証人 (債務者の債務の担保として自分の土地に抵当権を設定した人)
- 抵当不動産の第三取得者 (債務者の債務の担保として抵当権が設定された不動産を購入した第三者)
- 詐害行為の受益者 (債務者の詐害行為によって債務者の財産を取得した人)
- 詐害行為とは、返済できなくなることを知りながらも、債務者が債権者を害するために債務者が自身の財産を他人に贈与すること (差押逃れ)
- 後順位抵当権者は、一番抵当権者の債権の消滅時効を援用できない
- 時効成立したとしても、後順位抵当権者は、取り立てがしやすくなるだけで直接の利益を受けるわけではないから
- 消滅時効が完成していたとしても、その後に債務者が債務を承認する行為をした場合、たとえ債務者が時効の完成を知らなかったとしても、その時効の援用はできなくなる
- 時効完成後の債務承認は消滅時効の主張と相容れない行為であり、承認の時点で債権者も債務者に援用の意思はないと考えるため
取得時効
- 土地と建物の所有者が異なる場合に、建物の所有者がその土地を占有して時効が完成していたとしても、その建物の賃借人が、建物の所有者である賃貸人の取得時効を援用することはできない
時効の利益の放棄
- 時効の利益は、時効の完成後に放棄することができるが、完成前に放棄することはできない (民法146条)
- 契約時点で債務者に放棄を約束していても、その約束は無効となる
時効の完成猶予と更新
時効の更新
- 時効が完成する前に権利の承認があったときは、時効は更新され、その時から新たにその進行を始める (民法152条1項)
- 時効の更新は、その事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する (民法153条1項)
- 連帯債務などの場合、一部の債務者が債務を承認しても、承認していない債務者の時効は更新されない
時効の完成猶予
請求
- 裁判上の請求があった場合、訴えを提起した時点で時効の完成が猶予され、確定判決などで権利確定するまでの間は、時効は完成しない (民法147条1項1号)
- 確定判決などによって権利が確定した場合、時効は更新され、再度その進行を開始する (民法147条2項)
催告
- 催告があった時、その時から6ヶ月の間は時効は完成しない (民法150条1項)
- 催告によって猶予されている間の再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない (民法150条2項)
協議を行う旨の合意
- 当事者双方が協議によってトラブルを解決しようとしているとき、協議を行う旨を合意することにより、その時から1年を経過するまでの間は、時効は完成しない (民法151条1項)
- ただし、催告による完成猶予期間中の合意は、効力を有しない (民法151条3項)
- 合意によって猶予されている間の再度の合意は、時効の完成猶予の効力を有する (民法151条2項)
成年被後見人と時効の完成猶予
- 時効期間の満了前6ヶ月以内に債務者である成年被後見人の法定代理人が居ない期間があった場合、別の者が後見人となってから6ヶ月を経過するまでは、その時効は完成しない (民法158条1項)
Ref
2026/02/24
- TAC 行政書士の教科書 第2編 Ch.1 Section.7