能力の種類
- 社会の中で1人間が売買契約などの法律行為を行うためには、以下3つの能力を有している必要がある
- 権利能力: 権利や義務の主体となる能力 (原則、出生時に獲得)
- 意思能力: 自分の行為の結果を理解できる能力 (原則、6~7歳で獲得)
- 行為能力: 法律行為を単独で有効に行える能力 (原則、成年になることで獲得)
権利能力
私権の享有
- 私権の享有は、出生に始まる (民法3条1項)
胎児の権利能力
- 胎児は、原則、権利能力を持たない
- 以下3つの場合については、例外的に、胎児が生きて生まれた時に胎児の時に遡って権利能力を認める
- 相続 (民法886条1項)
- 不法行為損害賠償請求 (民法721条)
- 遺贈 (民法965条)
- 胎児が生きて産まれることが条件であるため、出生前の胎児を親が代理することはできない
意思能力
- 法律行為の当事者が意思表示をしたとき、意思能力を有していなかった場合、その法律行為は無効となる (民法3条の2)
行為能力
制限行為能力者
- 行為能力を制限された者を制限行為能力者と呼ぶ
- 制限行為能力者が制限された法律行為を、保護者の許可なしに行った場合、その法律行為は取り消すことができる
保護者の権利
- 保護者は、制限行為能力者の種類によっては、以下4つの権利を持ちうる
- 代理権: 対象者の法律行為を単独で代理できる権利
- 同意権: 対象者の制限対象の法律行為に同意し、その法律行為の事後の取消しをできなくさせる権利
- 取消権: 対象者の制限対象の法律行為のうち、同意権を行使していないもののみ、あとから取り消す権利
- 追認権: 取消可能な法律行為について相手から催告を受けた時に、対象者の法律行為に同意する権利
- 保護者が取消権を持つ場合、本人も取り消しを行うことができる
- ただし、本人は追認することはできない
制限行為能力者の種類
| 該当者条件 | 保護者 | 代理権 | 同意権 | 取消権 | 追認権 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 未成年者 | 18歳未満の者 (民法4条) | 親権者、未成年後見人 | O | O | O | O |
| 成年被後見人 | 事理を弁識する能力が殆どなく、家裁による後見開始の審判を受けた者 (民法7条) | 成年後見人 | O | X | O | O |
| 被保佐人 | 事理を弁識する能力は多少あるが通常人に比べると著しく不十分で、家裁による保佐開始の審判を受けた者 (民法11条) | 保佐人 | (X) | O | O | O |
| 被補助人 | 事理を弁識する能力はそれなりにあるが通常人に比べると不十分で、家裁による補助開始の審判を受けた者 (民法15条1項) | 補助人 | (X) | O | O | O |
未成年者
- 未成年者が法律行為を行うには、法定代理人の同意が必要である (民法5条1項)
- 同意がなかった場合、保護者あるいは本人が、あとから法律行為を取消すことができる (民法5条2項)
- 取り消された行為は最初からなかったものとして扱われる (民法121条)
- 既に受け取ったものがあるときは相手方に返す必要がある (民法121条の2第1項)
- 未成年者は、受け取ったものの一部を浪費している場合、現存利益のみを返還すれば良い (民法121条の2第3項)
- 既に受け取ったものがあるときは相手方に返す必要がある (民法121条の2第1項)
- 取り消された行為は最初からなかったものとして扱われる (民法121条)
後見・補佐・補助
- 精神障害により好意能力が制限されるものは、能力不足の程度によって以下3つに分類される
- 成年被後見人: ほとんどの行為が単独でできない
- 被保佐人: 重要な行為だけが単独でできない
- 被補助人: 重要な行為の一部が単独でできない
成年被後見人
- 単独で法律行為ができず、もし行った場合は取消しの対象となる (民法9条)
- 例外的に、日用品の購入その他日常生活に関する行為は、取り消せない
- 保護者の同意を得た法律行為であっても、保護者に同意権がないため、取消すことができる
- 後見人は正当な事由があるときは、家裁の許可を得て、その任務を辞することができる (民法844条)
- 家裁は、必要があると認めた場合に、本人、親族、後見人の請求又は食券で、後見監督人を選任できる (民法849条)
- 後見人の事務を監督する者
- 本人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹は後見監督人になれない
被保佐人
- 民法13条1項に挙げられた法律行為を行うには、保佐人の同意が必要であり、同意がない場合は取消しの対象となる
- 民法13条1項の行為の例 (重要な財産上の法律行為)
- 借金をする、保証人になる
- 不動産などの重要財産の売買をする
- 遺産分割をする
- 相続の承認や放棄をする
- etc
- 民法13条1項の行為以外にも、家裁における審判で、制限対象の行為を追加できる (民法13条2項)
- 保佐人が理由なく同意しないときは、家庭裁判所の許可を代わりとすることもできる (民法13条3項)
- 民法13条1項の行為の例 (重要な財産上の法律行為)
- 保佐人は通常代理権を有しないが、本人からの請求または本人の同意がある請求に基づく家裁における代理権付与の審判により、保佐人に代理権を付与できる
被補助人
- 民法13条1項で挙げられた法律行為のうち家裁の審判で定めた特定の行為については、補助人の同意が必要であり、同意がない場合は取消しの対象となる
- 補助開始の審判を行うためには、本人からの請求または本人の同意がある請求に基づく必要がある
相手方の催告権
- 制限行為能力者の契約相手は、保護者に対して1ヶ月以上の期間を定めて催告をすることができる (民法20条)
- 本人に催告をして期間内の回答を得られなかった場合、以下のように扱われる
- 未成年者・成年被後見人の場合、催告の効果はない
- 被保佐人・被補助人の場合、取消したとみなす
- 保護者に催告をして期間内の回答を得られなかった場合、追認したとみなす
- 本人に催告をして期間内の回答を得られなかった場合、以下のように扱われる
みなす vs 推定する
- みなす: 事実に関わらず、法律上そうであると扱い、反証があっても覆せない
- 推定する: 法律上事実があるものとして扱うが、反証があれば覆される
詐術
- 制限行為能力者が自らが好意能力者であると信じさせた場合、詐術に当たり、その行為は取消しできない (民法20条)
- 単に黙秘した場合は詐術に当たらない
- 黙秘したが他の言動と相まって相手を誤信させ、または誤信を強めさせた時は詐術に当たる
Ref
2026/02/14
- TAC 行政書士の教科書 第2編 Ch.1 Section.2